子なし夫婦のエンディングノートの書き方|FP2級が必要10項目を解説
はじめに
本記事について
・本記事には、筆者が販売する商品(ココナラ)へのリンクが含まれます。リンクの直前に「筆者の販売商品」と明示しています。
・筆者(宅建士・FP2級・福祉住環境コーディネーター2級)は、各種公開情報を専門家の視点で整理・解説しています。
・情報基準日:2026年6月時点で公表されている情報に基づきます。
・本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスではありません。具体的な判断は専門家へご相談ください。
【結論】子なし夫婦こそ、エンディングノートを早めに
最初に結論を書きます。
子なし夫婦のエンディングノートは、「いつか書こう」で後回しにせず、早めに着手する意義のある書類と考えています。子どもがいない夫婦にとっては、法的にも金銭的にも、自分たちの意思を残す主要な手段の一つになりうるからです。
公開情報を整理すると、子なし夫婦がエンディングノートを後回しにした場合、以下のリスクが想定されます。
- 相続人が配偶者+自分の親(親が亡くなっていれば兄弟姉妹/甥姪)になり、遺産分割協議が必要になることがある(遺言書がなければ配偶者が単独で相続を完結させにくい)
- 延命治療・介護施設の希望が共有されず、残された側が判断を迫られる
- 老後資金の全体像が見えないまま、不安を抱え続ける
逆に言えば、エンディングノートを書くことで「何をすべきか」が見える化されます。
子なし夫婦のエンディングノートが「普通のエンディングノート」と違う理由
市販のエンディングノートは、多くの場合「子どもがいる家庭」を前提に作られています。
たとえば、「子どもへのメッセージ」欄があったり、「相続人=配偶者+子ども」の前提で相続の解説が書かれていたりします。子なし夫婦がこれを使うと、自分たちに検討してほしい項目が抜けているのに、不要な項目だけ埋めることになりがちです。
子なし夫婦に必要なのに、市販品に抜けがちな項目
| 項目 | なぜ子なし夫婦に必要か |
|---|---|
| 法定相続人の確認と整理 | 直系尊属(親・祖父母)が存命なら配偶者+親(または祖父母)、直系尊属が全員亡くなっていれば配偶者+自分の兄弟姉妹(甥姪が代襲相続するケースも) |
| 遺言書作成の要否判断 | 遺言書がないと遺産分割協議が必要になり、配偶者の手続負担が増える。遺言書を作る場合も、親存命なら親の遺留分(遺産の1/6)を考慮した設計が必要 |
| おひとり様になった後の生活設計 | どちらかが先に亡くなった後、残された側の住まい・収入・介護をどうするか |
| 老後施設の希望と資金計画 | 子どもに頼れない以上、施設入所の判断は自分たちで決めておく必要がある |
| 死後事務の委任先 | 葬儀手配・行政手続き・契約解除などを「誰に頼むか」 |
| 見守り・安否確認の備え | 特に「おひとり様」になった後の安否確認手段を決めておく |
子なし夫婦のエンディングノートは「思い出を綴るノート」というより、「法的・金銭的な備えの設計図」という性格が強くなります。
子なし夫婦のエンディングノートに書くべき10項目
ここからは、具体的に「何を書けばいいか」を項目ごとに解説します。
❶ 基本情報
氏名・生年月日・住所・本籍地・マイナンバー・健康保険証番号など。当たり前のようですが、配偶者が急に倒れたとき、相手の本籍地や保険証番号をすぐ言えますか? 子なし夫婦はお互いしか頼れない場面が多いからこそ、基本情報の共有が大切です。
❷ 法定相続人の整理(最重要)
民法では、配偶者は常に相続人となり、それに加えて以下の順位で他の相続人が決まります。
- 第1順位:子(およびその代襲者である孫)
- 第2順位:直系尊属(親、親が全員亡くなっていれば祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(先に亡くなっていれば甥姪が代襲相続)
上位の順位の相続人が一人でもいれば、下位の順位には相続権が移りません。子なし夫婦の場合は第1順位(子)が不在のため、
- 親が存命なら「配偶者+親」
- 親が全員亡くなっていても祖父母が存命なら「配偶者+祖父母」
- 直系尊属が全員亡くなっていれば「配偶者+自分の兄弟姉妹(先に亡くなっていれば甥姪が代襲相続)」
が法定相続人になります。
なお、「義理の兄弟姉妹(配偶者の兄弟姉妹)」は自分の相続では法定相続人になりません(配偶者の相続のときに、配偶者側の親・兄弟姉妹が登場します)。
遺言書を作るときに知っておきたい「遺留分」
直系尊属(親・祖父母)が相続人になるケースでは、直系尊属に遺留分があります。配偶者と直系尊属が相続人の場合、遺産全体の半分(総体的遺留分 1/2)に直系尊属の法定相続分(1/3)をかけた、「遺産の1/6」が直系尊属側の遺留分となります(祖父母が相続人になる場合も計算式は同じです)。
遺言書で「全財産を配偶者に」と書いても、直系尊属はこの1/6相当の金銭の支払い(遺留分侵害額請求/2019年7月施行の民法改正で金銭債権化)を配偶者に対して請求できます。
一方、兄弟姉妹には遺留分がありません。直系尊属が全員亡くなって兄弟姉妹だけが相続人になるケースでは、遺言書で「全財産を配偶者に」と書けば、原則そのとおりに実現できます。
エンディングノートには、自分の親・兄弟姉妹・甥姪の氏名と連絡先、および配偶者側の親・兄弟姉妹・甥姪の氏名と連絡先を、それぞれ整理して書いておきましょう。
宅建士メモ: 不動産(自宅)を持っている場合、相続登記が2024年4月から義務化されています(不動産登記法76条の2第1項)。配偶者が単独で相続する場合も登記は必要なので、エンディングノートには「遺言書を作成済み/未作成」「不動産の所在地・登記識別情報の保管場所」を必ず記載してください。
❸ 財産の棚卸し
預貯金・不動産・保険・年金・投資・ローンなど、資産と負債の全体像を一覧にします。
子なし夫婦がこれを怠ると、残された配偶者が「相手の口座がどこにあるかわからない」状態になります。デジタル資産(ネット銀行・証券・暗号資産・サブスク)も忘れずに。
❹ ライフプラン表(老後の資金シミュレーション)
エンディングノートと合わせてライフプラン表を作ると、「今の貯蓄で老後は足りるのか」が数字で見えます。
ライフプラン表を作ると、漠然とした不安が具体的な検討課題に変わります。
特に子なし夫婦は以下を必ずシミュレーションに入れてください。
- 遺族年金の制度変更 … 2028年4月施行予定の年金制度改正で、遺族厚生年金は段階的に有期給付へ移行する方向で議論されています。施行直後は若年層から先行適用される予定で、年齢区分の詳細は厚労省の最新公表資料、または当サイト内の遺族年金改正解説記事でご確認ください
- 介護費用 … 子どもに頼れない分、施設費用や訪問介護の自己負担を多めに見積もる
- 住まいの維持費 or 住み替え費 … 持ち家なら修繕・固定資産税、賃貸なら家賃の継続を計算に入れる
ライフプラン表を自分で作ってみた上で『この見積もりで合っているか不安』という方は、FPへの無料相談も選択肢のひとつです。相談したからといって契約の義務はありません👉保険ガーデンへ
❺ 医療・介護の希望
延命治療の希望、介護施設の種類(在宅/サ高住/有料老人ホーム)、かかりつけ医の情報などを記載します。
子なし夫婦の場合、配偶者が認知症になったとき延命の判断をする人が自分しかいないケースもあります。お互いの希望を書面で残しておくことは、残された側の精神的負担を軽減できます。
❻ 葬儀・お墓の希望
家族葬にするか、直葬か。お墓は既存の墓に入るのか、海洋散骨や樹木葬を希望するのか。
子なし夫婦は「お墓の継承者がいない」問題に直面しやすいです。永代供養や海洋散骨も選択肢に入れて、希望を明記しておきましょう。
❼ 遺言書の状況
エンディングノート自体には法的効力はありません。ただし、「遺言書をどこに保管しているか」「遺言執行者は誰か」をエンディングノートに書いておくことで、万が一のとき遺言書が発見されやすくなります。
子なし夫婦で遺言書を作っていない場合は、エンディングノートの遺言書欄に「未作成 → 要作成」と書くだけでも、次のアクションにつながります。
❽ 死後事務の委任先
葬儀の手配、役所への届出、公共料金の解約、賃貸の退去手続き——これらを「誰がやるのか」を決めておきます。
子なし夫婦は、配偶者が先に亡くなった後、自分が亡くなったときの手続きをしてくれる人を確保しておく必要があります。甥姪や友人に事前に依頼するか、死後事務委任契約を専門家(行政書士・司法書士等)と結ぶことも検討してください(契約内容によって幅がありますが、目安として数十万円規模の費用がかかるケースが一般的です)。
なお、近年、身元保証・死後事務サービスを提供する事業者の破綻や預託金の返還トラブルが報告されています(消費者庁・国民生活センター等)。契約前に、預託金の保全方法・解約条件・運営実態を十分にご確認ください。
❾ デジタル遺品の整理
スマートフォンのパスワード、SNSアカウント、クラウドストレージ、サブスクリプション、ネットバンキングのログイン情報。
これらを「どこかに書いておく」だけで、残された側の手間が大きく減ります。
❿ 「おひとり様」になった後の備え
子なし夫婦のエンディングノートで特に検討してほしいのが、この項目です。
どちらかが先に亡くなった後、残された側は「おひとり様」になります。そのとき、
- 住まいはどうするか(今の家に住み続ける?住み替える?)
- 見守りサービスは使うか
- 日常の買い物・通院はどうするか
- 緊急時に連絡する人は誰か
これらを夫婦で元気なうちに話し合って、ノートに書いておくのが理想です。
なお、❽の死後事務委任契約は「亡くなった後」を、任意後見契約は「判断能力が低下したとき」をカバーする別の契約です。おひとり様化に備えるなら、これらを組み合わせて検討してください(必要に応じて専門家にご相談ください)。
エンディングノートを書く方法:いくつかの選択肢
「書こう」と決めたら、次は「何に書くか」です。いくつかの選択肢があります。
| 方法 | 費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 市販のエンディングノート(書店・100円ショップ) | 100〜2,000円 | 手軽に始められる。書き込み式で迷わない。書き直しはやや手間がかかる場合あり |
| 自治体の無料配布・無料PDF | 0円 | 無料で入手できる。自治体により内容が大きく異なる。ライフプラン表を含む配布物もあれば、項目のみの配布もある |
| デジタルテンプレート(Excel・Word等) | 0円〜数千円 | PC・スマホで作成し、何度でも修正できる。銀行口座や貯蓄額などデリケートな情報をWEB上のフォームに入力する必要がなく、自分のPC内だけで完結する安心感がある。子なし夫婦向け・夫婦専用など、用途に特化した有料テンプレートもある。PC環境や印刷の段取りは別途必要 |
子なし夫婦に検討してほしいのは「エンディングノート+ライフプラン表のセット」です。ノートだけでは「気持ちの整理」で終わってしまい、「老後のお金は足りるのか」という中心的な不安のひとつが残ります。ライフプラン表だけでは「葬儀や相続の希望」が抜け落ちます。両方をセットで持つことで、終活の全体像が見渡しやすくなります。
「今どきExcel?」と思われるかもしれません。しかし、エンディングノートやライフプラン表には銀行口座・貯蓄額・保険の証券番号・年金見込額など、非常にデリケートな情報を記入します。WEB上のフォームに入力する方式では、入力したデータがサーバーに残るのではないかと不安に感じる方も少なくありません。Excel形式であれば、データは自分のPC内だけに保存され、外部に送信されることはありません。終活という長期間にわたるデリケートな情報管理だからこそ、手元で完結するExcelは合理的な選択です。
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エンディングノートを書くとき、やりがちな3つの失敗
失敗① 「完璧に書こう」として1ページも進まない
エンディングノートは下書きで十分です。全項目を完璧に埋める必要はありません。まず鉛筆で書いて、後から修正する前提で進めてください。
失敗② 書いたことを配偶者に共有しない
子なし夫婦のエンディングノートは「自分用」ではなく「配偶者への引き継ぎ書」でもあります。書いたら必ず相手に見せて、お互いの希望をすり合わせてください。
失敗③ 一度書いて放置する
収入・支出・健康状態・法制度は変わります。特に2028年施行予定の遺族年金改正は、子なし夫婦のライフプランの前提を変えうる論点です。年に1回は見直すことを前提に書きましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. エンディングノートに法的効力はありますか?
ありません。エンディングノートはあくまで「意思の記録」です。法的効力を持たせるには、別途遺言書(主に用いられるのは自筆証書遺言・公正証書遺言の2つ)を作成する必要があります。ただし、エンディングノートに書いた内容は、遺言書を作成する際のたたき台として役立ちます。
Q2. 何歳から書き始めるべき?
早ければ早いほどよく、目安としては50代に入ったら一度は書いておくことをおすすめします(個人差があります)。特に子なし夫婦は、元気なうちに夫婦で相談できるかどうかが、その後の終活のスムーズさを左右します。
Q3. 夫婦で1冊?それぞれ書く?
それぞれ1冊ずつ書くのが基本です。ただし、共通する項目(財産情報・保険・お互いの親や兄弟姉妹の連絡先)は一緒に書くと効率的です。
Q4. 書いたノートはどこに保管する?
配偶者がすぐに見つけられる場所に保管してください。金庫や引き出しに入れるなら、その場所を配偶者に伝えておくこと。デジタルテンプレートの場合は、PC内の場所と、印刷物の保管場所を共有しておきましょう。
専門家所感|FP・宅建士・福祉住環境コーディネーターとして
住まいと終活に関わる情報を整理していて感じるのは、子なし夫婦の終活は「気持ちの整理」と「お金の設計」を同時に進めると効果が出やすいということです。
市販のエンディングノートは「気持ちの整理」には向いていますが、「老後資金は足りるのか」「遺族年金はどうなるのか」「住まいの維持費は払い続けられるのか」という数字の問題には自動的には答えてくれません。
漠然とした不安を、具体的な数字や次のアクションに変えていくことが、終活の第一歩になります。すべてを一度に完璧にする必要はありません。まずは今の状況を書き出すところから始めてみてください。
まとめ:子なし夫婦のエンディングノートは「設計図」として育てる
子なし夫婦のエンディングノートは、一般的な「万が一の備え」とは性格が少し違います。
子どもという「自動的な相続人・介護の頼り先」がいない以上、自分たちの老後・相続・介護・死後事務を、自分たちで設計しておくことに大きな価値があります。
エンディングノートは、その設計図です。
今日からできる3つのステップをまとめます。
- まず書き始める … 完璧でなくていい。鉛筆でもExcelでも、今日1項目だけ埋める
- ライフプラン表で数字を出す … 老後資金の見通しを、漠然とした不安から具体的な検討課題に変える
- 配偶者と共有する … 書いたら見せる。お互いの希望を知ることが、夫婦での終活の基本
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自分の状況を整理してから動きたい方へ。筆者(FP2級×宅建士)が子なし夫婦向けに設計した「エンディングノート+ライフプラン表」のテンプレート。Excelで何度でも見直せます。
順番にデータを入力するだけでライフプラン表が完成する設計なので、専門知識は不要です。
データは自分のPC内だけに保存され、WEB上に送信されることはありません。
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