遺族年金は2028年改正で子なし夫婦”5年化”?実態を宅建士・FPが解説
はじめに
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・筆者の立場:宅地建物取引士・FP2級・福祉住環境コーディネーター2級の資格を持つ筆者が、公的機関の公表資料・報道など公開情報を第三者の専門家目線で整理したものです。個別の年金額をお約束するものではありませ
・情報基準日:2026年5月時点。改正の中心となる遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定です(制度の細目は今後の政省令で変わる可能性があります)。
・免責:実際の受給可否・金額は、加入記録や家族構成によって一人ひとり異なります。最終的な判断は、必ずお近くの年金事務所・ねんきんダイヤルまたは社会保険労務士などの専門家にご確認ください。まずは公的窓口(年金事務所での無料相談、ねんきんネットでの試算)を第一選択としてご活用ください。
結論:影響を受けるのは「子のいない、若い世代の配偶者」。今のうちに”自分軸の生活設計”を
先に結論からお伝えします。今回の改正で生活が大きく変わる可能性が高いのは、次のような方です。
- 子どもがいない、60歳未満の配偶者(夫・妻どちらも)
- 配偶者が会社員・公務員(=厚生年金に加入している)
- 2028年4月以降に、配偶者を亡くす(遺族厚生年金の受給権が新たに発生する)
逆に、すでに遺族年金を受け取っている方や、2028年3月末までに受給権が発生する方は、有期給付(5年化)等の本体改正の影響を原則として受けません。ただし加算部分のうち中高齢寡婦加算は別ルールで段階的縮小の方向で、既受給者の加算額にも影響する可能性があります(後述)。
そして重要なのは、この改正が「子なし夫婦」に大きく関わるという点です。当サイト「すましゅう」がテーマにしている、お子さんのいないご夫婦にとっては、ご自身に直結する話になります。
「配偶者に先立たれた後、年金だけで一生暮らせる」という前提が、若い世代では変わっていく可能性があります。だからこそ、早いうちに”自分一人になったときの生活費”を数字で把握しておくことが、有効な備えのひとつになります。
👉 まずは年金事務所での無料相談やねんきんネットで、ご自身の年金見込み額を把握するところから始めてみてください。
そもそも遺族年金とは?(現行制度のおさらい)
遺族年金には大きく2種類あります。
| 種類 | 加入していた制度 | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 遺族基礎年金 | 国民年金(全員) | 18歳到達年度末までの子(障害1級・2級は20歳まで)を養育する世帯が対象 |
| 遺族厚生年金 | 厚生年金(会社員・公務員) | 配偶者・子・父母・孫・祖父母などが順位に従って受給対象になりうる(兄弟姉妹は受給対象に含まれません)。今回の改正の主役 |
子のいないご夫婦に関係してくるのは、主に遺族厚生年金です。
現行の遺族厚生年金は、ざっくり言うと 「亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3」相当 が、要件を満たす遺族に支給されます(厚生年金保険法に基づく給付)。ただし、ご自身に老齢厚生年金がある場合の併給調整や、中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算との関係により、実際の総支給額は単純に4分の3ではない場合があります。
ただし、現行制度には男女差があります。
- 妻:30歳以上で子がいない場合は原則無期(一生涯)。一方で、夫死亡時に妻が30歳未満で子がいない場合は5年の有期給付です(つまり「子のない妻=全員が無期」ではありません)。
- 夫:妻死亡時に夫が55歳未満だと受給権が発生しません。55歳以上であっても、原則として支給開始は60歳からとなります(遺族基礎年金を併給する場合等の例外を除く)。
この「妻は手厚く、夫は受給しにくい」という男女差をならすのが、今回の改正の出発点です。
2028年改正で何が変わる? 一覧表で総ざらい
2025年6月13日に成立し、同月20日に公布された年金制度改正法(正式名称:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律/令和7年法律第74号)により、遺族厚生年金は2028年4月から段階的に見直しとなります。子のない配偶者にかかわる主な変更点を、現行と並べて整理します。
| 論点 | 現行制度 | 2028年改正後(予定) |
|---|---|---|
| 支給期間(子なし) | 妻は30歳以上なら原則無期/30歳未満は5年有期/夫は55歳未満は受給権なし | 段階的に「子のない60歳未満は男女とも原則5年の有期給付」へ統一。施行直後の入口は女性は40歳未満/男性は60歳未満から始まり、女性の対象年齢は将来に向けて段階的に引き上げられる予定(30歳未満妻は実質現状維持) |
| 男女差 | 妻は手厚く、夫は受給しにくい | 男女共通のルールに統一 |
| 収入要件 | 遺族の年収850万円未満が条件 | 5年の有期給付については年収850万円の収入基準が撤廃される方向(継続給付については別途収入要件) |
| 5年間の金額 | 老齢厚生年金(報酬比例部分)の3/4相当 | 本体3/4はそのまま+「有期給付加算」(亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)の1/4相当)が上乗せされ、合計4/4相当に(本体比で約1.33倍) |
| 5年経過後 | (無期なら)継続 | 障害がある人・収入が一定以下の人等は「継続給付」で受給を継続できる方向。厚労省公表によれば、単身の場合は月額約10万円(年122万円)以下で全額支給、月20〜30万円を超えると全額支給停止(配偶者が寡婦要件を満たす場合は年204万円程度が目安) |
| 死亡分割(仮称) | なし | 新たな分割制度の創設が検討。婚姻期間中の配偶者の厚生年金記録を生存配偶者の年金記録に反映させる仕組み。既存の「離婚時年金分割」とは別制度として、死別時に発動する仕組みとして議論されており、按分割合・既存の離婚分割との関係整理は政省令で確定予定 |
| 中高齢寡婦加算 | 40歳以上65歳未満の妻が対象(年額は日本年金機構公表値を確認) | 段階的に廃止の方向(25年程度かけて縮小) |
※ 「5年間の金額」の「約1.33倍」「合計4/4相当」とは、亡くなった方の老齢厚生年金(報酬比例部分)に対する倍率であり、亡くなった方の生前の手取り収入や夫婦の生活費に対する倍率ではありません。実際の支給額は加入実績で大きく異なります。また、ご自身に老齢厚生年金がある場合の併給調整、中高齢寡婦加算・経過的寡婦加算との関係により、実際の総支給額は単純に1.33倍にならない場合があります。具体的な算定基礎は政省令で確定予定です。
ポイントは「打ち切り」ではなく「形が変わる」こと
「遺族年金が5年で打ち切り」という言葉が独り歩きしていますが、これは正確ではありません。実態は次のとおりです。
- 5年間は給付水準が引き上げられる方向(本体3/4+有期給付加算1/4=合計4/4相当、本体比で約1.33倍。ただし併給調整等で実額の倍率は異なる場合あり)。亡くなった直後の生活再建期を、集中的に支える設計です。
- 5年経過後も完全にゼロではない。障害がある方・収入が一定以下の方(厚労省公表では単身月約10万円以下で全額支給が目安)には「継続給付」が用意されており、また「死亡分割(仮称)」で65歳以降の自分の老齢厚生年金に反映される仕組みも議論されています(按分割合等の細目は今後確定)。
- ただし、働いて生活を立て直せる現役世代は、5年でいったん区切られる——これが本質です。
つまり、「死別後は年金で一生面倒を見る」制度から、「生活を立て直すための数年間を集中支援する」制度への方針転換と整理することができます。
【最重要】子なし夫婦への影響——”もらえる人が増える”のに”長期の安心は薄くなる”
ここが、子のいないご夫婦にとって一番大事なところです。改正は、子なし夫婦に対してプラスとマイナスの両面を持っています。
プラス面:これまで対象外だった人が受給できるようになる
- 子のない夫:現行では妻死亡時に55歳未満だと受給権が発生しませんでした。改正後は「18歳年度末までの子がいない60歳未満の男性」も対象になる方向です。男性側の新規受給者が一定数発生する見込みで、影響は男性のほうが大きいと見られています(具体的な人数は厚労省公表資料でご確認ください)。
- 5年の有期給付については収入要件が撤廃される方向:年収850万円の壁がなくなり、共働きで収入のある配偶者も受給できるようになります(継続給付については別途収入要件が想定されています)。
マイナス面:長期の保障が「5年+α」に縮む
- 30歳以上で子のない妻:これまで無期で受け取れていた層が、将来的に5年の有期給付へ移行する見込みです。「一生もらえる」前提が崩れます。なお、現行で既に5年有期給付の対象である30歳未満の子のない妻については、改正後も5年有期は実質現状維持の方向です(死亡分割等の新制度の対象となるかは政省令で確定予定)。
📌 中高齢寡婦加算の段階的縮小は別論点
2028年改正の本体(5年有期化)の対象外でも、中高齢寡婦加算については別ルールで段階的縮小の対象となる方がいます。
・対象範囲:現在40歳以上65歳未満の妻に支給されている中高齢寡婦加算が、25年程度かけて段階的に縮小・廃止される方向。
・既受給者への適用:既に加算を受給している方の加算額も縮小対象となる可能性があります。
・確認方法:最新の厚労省公表資料の確認、または年金事務所での個別照会が必要です。
つまり子なし夫婦が直面するのは「自分一人の長い後半生」をどう設計するか
お子さんがいないご夫婦の場合、配偶者に先立たれた後の生活設計を、子のいる世帯とは異なる前提で考える必要があります。具体的には、
- 遺族基礎年金(子のある世帯向け)が一切支給されない ため、年金収入は遺族厚生年金(および自分の老齢年金)が中心になります。
- 子から得られる経済的・物理的サポートを家計計画に織り込めない ため、貯蓄・保険・就労の組み合わせで生活設計を組む必要があります。兄弟姉妹・甥姪・地域コミュニティ等の関係性は個人差が大きいため、ご自身の状況に合わせた計画が重要です。
- 住まいの相続先・身元保証等の論点が子のいる世帯と異なるため、住まいの終活(配偶者の死後の相続登記をどう進めるか、老後の施設をどう選ぶか)も合わせて考える必要が出てきます。
そこへ「遺族厚生年金は原則5年」という変更が重なると、5年後以降の生活費を、自分の老齢年金・就労収入・貯蓄・保険でどうまかなうかの設計が、子のいる世帯以上に重要になります。だからこそ、元気なうちに”残された側の家計”をシミュレーションしておくこと——これが、本記事で一番お伝えしたい点です。
保険・貯蓄での具体的な備え方は、後半の「今からできる5つの備え」で扱います。
あなたは対象? 影響を受ける人・受けない人の早見表
「うちは関係あるの?」を、ここで切り分けましょう
(最終設計は政省令で確定予定です。中高齢寡婦加算の縮小は本表とは別論点として上述を参照)。
影響を受けない(現行どおりの方向)方
- ✅ すでに遺族厚生年金を受給している方(本体5年化は適用外。加算は中高齢寡婦加算の縮小を別途参照)
- ✅ 2028年3月31日以前に受給権が発生する方(本体5年化は適用外。加算は中高齢寡婦加算の縮小を別途参照)
- ✅ 施行直後の2028年4月時点で60歳以上で配偶者を亡くし、受給権が発生する方(無期給付が維持される見込み。ただし無期維持の年齢の境目は政省令で確定予定)
- ✅ 18歳到達年度の3月31日まで(障害等級1級・2級に該当する場合は20歳に達するまで)の未婚の子を養育している方
影響を受ける可能性がある方
- ⚠ 2028年4月以降に新たに受給権が発生する、子のない60歳未満の方(男女とも)
- △ 施行直後の2028年4月時点で40歳以上の女性:当面は5年有期化の対象外となる見込み。ただし段階的移行のため将来的に対象範囲が広がる可能性があります(後述)。加えて中高齢寡婦加算の縮小は別途影響します。
- ⚠ 施行直後の2028年4月時点で40歳未満の女性:厚労省公表によれば、施行直後の入口は「女性40歳未満/男性60歳未満」から始まり、女性の対象年齢は将来に向けて段階的に引き上げられる予定です。2028年4月1日時点で40歳未満となる目安は1988年4月2日以降生まれです。
- ⚠ 子が18歳年度末を超えた後に、遺族厚生年金を受け取り始める方
※段階的移行のため、対象となる年齢の上限は将来に向けて引き下げられていく見込みです。「今40代だから一生関係ない」とは言い切れない点に注意してください。
今からできる5つの備え
改正は2028年4月から。施行まで時間があるうちに、できることから順に着手することをおすすめします。子なし夫婦の視点で、現実的にできることを5つ挙げます。
- ねんきんネット/ねんきん定期便で、夫婦それぞれの年金額を把握する
まず「亡くなった側の老齢厚生年金がいくらか」を知らないと、遺族厚生年金の見当もつきません。日本年金機構の公式ページから手続きできます。 - “配偶者が先に亡くなった場合”の家計を、片方ずつ試算する
残された側の収入(自分の年金+就労)と支出の差額を出します。ここが備えの出発点です。 - 不足額を、貯蓄・資産形成・保険のどれで埋めるかを決める
5年経過後の”自分一人の生活費”を、どの手段でカバーするか。まずは既存の保険を見直し(断捨離)、それでも不足する保障があれば新規加入を検討するのが基本順序です(保険は加入年齢・健康状態によって選択肢が限られる場合があります)。あわせて読みたい:保険の見直し(断捨離)の進め方/子なし世帯のがん保険の考え方 - 専門家に一度、現状を棚卸ししてもらう
年金・保険・資産は個人ではどうしても全体像が見えにくい分野です。まずは年金事務所(無料)やねんきんダイヤルが第一選択です。より深い相談が必要なら、社会保険労務士・FPなどの専門家への相談もご検討ください。 - エンディングノートで”お金以外”も整理する
子のいない世帯ほど、口座・保険・連絡先などの情報共有が後回しになりがち。残された側が迷わないための備えです。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 「5年で打ち切り」って本当ですか?
A. 言葉だけが先行していますが、正確ではありません。5年間は給付水準が引き上げられる方向(本体3/4+有期給付加算1/4=合計4/4相当、約1.3倍)で、5年経過後も障害がある方・収入が一定以下の方(厚労省公表では単身月約10万円以下で全額支給が目安)には「継続給付」が用意されています。さらに「死亡分割(仮称)」で65歳以降の自分の年金に反映される仕組みも議論されています。ただし、現役世代は5年でいったん区切られるのが基本方針です。
Q2. すでに遺族年金をもらっています。減らされますか?
A. 遺族厚生年金の本体(5年有期化)は適用されません。ただし、加算部分のうち中高齢寡婦加算は段階的縮小の方向で、既受給者の加算額も対象となる可能性があるため、加算分については最新の公表資料・年金事務所での個別確認をお願いします。
Q3. 子どもがいる世帯は今回の改正に関係ない?
A. 子(18歳到達年度の3月31日まで・障害1級2級は20歳まで)がいる間は現行どおりですが、子が要件年齢を超えた後に遺族厚生年金を受け取り始める場合は、5年有期等の改正の対象となり得ます。
Q4. 共働きで収入が多くても、遺族厚生年金はもらえますか?
A. 5年の有期給付については年収850万円未満という収入基準が撤廃される方向で、収入の多寡にかかわらず受給できるようになる見込みです。継続給付については別途収入要件が想定されている点にご注意ください。
Q5. 中高齢寡婦加算はいつなくなりますか?
A. 一律に即廃止ではなく、25年程度かけて段階的に縮小・廃止される方向です。経過措置の詳細は政省令で確定予定で、ご自身の加算がどう変わるかは年金事務所での個別確認をおすすめします。
補足:男女差の解消という大きな流れ
今回の改正の根っこには、「男性が働き、女性が家庭を守る」という昭和の家族モデルを前提にした制度を、共働きが当たり前の時代に合わせて作り直す、という狙いがあります。男女差をなくすことで、これまで遺族厚生年金を受け取りにくかった夫側の保障が広がる一方、妻側の長期保障は薄くなる——この”ならし”が、子なし世帯にとっては痛みと恩恵の両方を生みます。
なお、本記事は遺族「厚生」年金の見直しを中心に整理しています。遺族基礎年金(子のある世帯向け)やひとり親控除など、関連する見直しも同時に進んでいるため、お子さんのいる世帯は別途ご確認ください。また、独身・離別単身でご自身に配偶者がいない方は、遺族厚生年金の主たる受給対象外です。ご自身の老齢年金設計の参考としてお読みください。
遺族年金の改正を踏まえて「老後のお金を誰に相談すべきか」を考えたい方へ。
FP・保険ショップ・士業・公的機関それぞれの「できること・できないこと」を整理した記事はこちらです。
👉老後のお金の相談はどこにする?保険・FP・士業の違いを宅建士・FPが解説
遺族年金の改正を踏まえた老後資金計画をFPに相談したい方へ👉お金の無料相談はどこがいい?宅建士・FPが3社を比較|2026年最新
宅建士・FPの所感(まとめに代えて)
最後に、宅建士・FPの立場からの率直な所感です。
今回の改正で一番伝えたいのは、「制度が手厚いから大丈夫」という時代は、若い世代では変わりつつあるということです。特に子のいないご夫婦は、配偶者に先立たれた後の生活設計を、子のいる世帯とは異なる前提で考える必要があります。遺族厚生年金が「原則5年」になるなら、残りの人生のお金を、年金に加えて自分で組み立てる準備を進めておくことが、生活の安定につながりやすくなります。
施行は2028年4月。施行まで時間があるうちに、できることから順に着手することをおすすめします。やることはシンプルで、①夫婦それぞれの年金を把握し、②”片方が先に逝ったとき”の家計を試算し、③不足を貯蓄・保険・就労でどう埋めるかを決める。この3ステップです。
不動産(持ち家をどうするか)と保険、そして年金。住まいとお金の終活は、本来バラバラに考えるものではありません。元気なうちに、夫婦で一度数字にしてみることは、制度改正に振り回されにくくなる有効な備えのひとつです。
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